お盆は、先祖や故人の霊を迎え、感謝と祈りを捧げる日本の大切な風習です。その中心となるのが盆棚(精霊棚)であり、花や供物を添えて心を尽くすことでご先祖を丁寧にお迎えする場が整います。

特に、花は空間を清らかに整えるだけでなく、供養の気持ちを目に見える形で表現できる存在です。しかし、仏事においてどんな花を選ぶべきか、どのように飾れば良いのかと迷う方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、盆棚に飾る花の基本や選び方、飾るときの注意点などを具体的に解説するのでぜひ参考にしてください。

盆棚(精霊棚)とは

盆棚(精霊棚)とは

「盆棚(ぼんだな)」、または「精霊棚(しょうりょうだな)」とは、お盆の時期にご先祖や故人の霊をお迎えし、供養するために家庭内に設けられる祭壇のことを指します。仏壇の前や和室の一角に机や棚を設置し、その上に花や供物、提灯、位牌などを飾ることで霊が一時的にこの世に戻ってこられる場所を整えるのが一般的です。

盆棚には、迎え火・送り火に使う「精霊馬(しょうりょううま)」や季節の野菜・果物、お菓子、飲み物など、故人が生前好んだものを並べることも多く、それぞれに意味が込められています。

飾り方は宗派や地域によって多少異なるものの、共通しているのは「心を込めて丁寧にお迎えする」ことです。花を供えるのもその一環であり、清らかな花を添えることで、盆棚の空間に華やぎと敬意をもたらす役割を果たしています。

現代では、伝統を尊重しつつも住宅事情に合わせて簡易的な盆棚が選ばれるケースも増えており、花や飾りの選び方も多様化しています。形式にとらわれすぎず、家族それぞれの思いを反映した飾り方をすることが供養の本質といえるでしょう。

盆棚に飾る花の基準

盆棚に飾る花を選ぶ際、以下のような基準で決めるのがおすすめです。

  • 仏花としてよく使われる定番の花
  • 夏の暑さに強く日持ちする花
  • 故人の好みに合わせた花

盆棚に飾る花は、「きれいであれば何でも良い」というわけではありません。お盆の期間中は、ご先祖や故人の霊を迎えるための特別な時間であるため、花の種類や色、飾る意味を理解した上で選ぶことが求められます。

ここでは、花を選ぶ3つの選定ポイントについて解説します。

仏花としてよく使われる定番の花

お盆の供花としてよく選ばれるのが、仏事用にふさわしいとされている仏花です。キクやリンドウ、トルコキキョウ、スターチス、カーネーションなどは多くの家庭や寺院で使われており、宗派や地域を問わず安心して選べる種類です。

これらの花は色合いが落ち着いていて香りが強すぎず、見た目も品があるため、仏壇や盆棚との相性が良いのが特徴です。特に白や紫、淡いピンクなどの花は「清らかさ」「敬意」「静けさ」といった仏事にふさわしい意味合いを持ち、供養の気持ちをやさしく表現してくれます。

迷ったときには、このような定番の仏花を中心にアレンジメントを構成すれば、形式的にも内容的にも失礼のない供花になるでしょう。

夏の暑さに強く日持ちする花

お盆の時期は真夏であり、室内が高温多湿になることも多いため、花の持ちが悪くなりがちです。そのため、暑さに強く日持ちの良い花材をチョイスすることも一つの選び方です。

夏の暑さに強い代表的な種類として、リンドウやクルクマ、グロリオサ、グラジオラスなどが挙げられます。これらの花は気温が高くても比較的傷みにくく、姿も凛としているため、仏前にもしっくりと馴染みます。

また、茎がしっかりしていて水をよく吸い上げる種類は、こまめに水を替えられない環境でも安心して飾れます。さらに、保水機能のあるフラワーアレンジメントを選ぶことで、さらに花の持ちを長く保つことも可能です。飾る場所の環境に応じて、長く美しさを保てる花材を選びましょう。

故人の好みに合わせた花

お盆の供養は形式を守るだけでなく、故人に寄り添う気持ちを込めることも大切です。そのため、生前に故人が好きだった花を飾るという選び方も温かみのある方法です。

たとえば、故人がヒマワリやガーベラなどを好んでいた場合、仏事に不向きとされがちな花でも落ち着いた色味を選べば、マナーを守りつつ個人の趣味を反映することが可能です。故人の人柄や思い出に合った花を選ぶことで、供養がより意味深いものになるでしょう。

ただし、宗教的な背景や受け取る側の感覚にも配慮し、あくまで気持ちを込めた供養として調和の取れた演出を心がけることが重要です。

盆棚に花を飾る際のポイント

盆棚に花を飾る際のポイント

盆棚に花を飾る際、以下の3点を押さえておくことが肝心です。

  • 色合いは落ち着いたトーンを意識する
  • トゲや香りの強すぎる花は避ける
  • 左右対称にバランス良く飾る

盆棚に花を飾る際は、ただ美しく見えるように選ぶのではなく、供養の場にふさわしい「静けさ」や「整えられた印象」を意識することが大切です。特に仏花にはマナーや作法に基づいた考え方があるため、それらを押さえた上で故人への思いを込めることが重要です。

最後に、盆棚の花をより丁寧に心を込めて飾るための具体的なポイントを紹介します。

色合いは落ち着いたトーンを意識する

盆棚に飾る花の色は、派手さや華やかさよりも落ち着きや清らかさを感じさせる色合いを選ぶのが基本です。

仏事にふさわしいとされるのは、白や紫、淡いピンク、淡い青といったトーンであり、これらは「浄化」や「哀悼」「やすらぎ」を象徴する色でもあります。特に白は清浄を意味し、紫は高貴で敬意を示す色とされており、仏前にはよく選ばれます。

色のバランスにおいても、濃淡を混ぜて単調にならないよう工夫することでより洗練された印象になります。季節感を加えるために淡い黄色やグリーンを挿し色にするのも良いですが、全体として落ち着いた雰囲気を損なわないよう調整することが大切です。

トゲや香りの強すぎる花は避ける

仏前に供える花として見た目の美しさだけでなく、「清らかさ」や「安全性」も配慮すべき要素です。そのため、種類によっては避けたほうが良いとされています。

特に避けるべきなのが、トゲのあるバラやアザミなどの花です。トゲは「争い」や「痛み」を連想させるため、供養の場にはふさわしくないと考えられています。

また、香りが強すぎる花もNGとされることが多いです。飾る人が高齢の場合や室内が密閉されている場合など、匂いに敏感な状況もあるため、仏事用にはできるだけ香りの弱い花を選ぶのが無難です。全体として、「静かに、穏やかに供える」ことを意識した花選びが望まれます。

左右対称にバランス良く飾る

盆棚に花を飾る際の配置にも気を配ることで、見た目の印象が大きく変わります。特に仏前においては左右対称の配置が好まれる傾向にあり、これは「調和」や「秩序」を表すとともに敬意を示す形でもあります。

また、仏壇の中央に位牌や写真が置かれている場合、それを囲むように花を配置することで空間にまとまりが出ます。供花を飾る際は左右対称でバランス良く、清潔感と調和のある飾り方を心がけることが大切です。

まとめ

盆棚(精霊棚)に花を飾ることはただ美しく見せるためではなく、ご先祖や故人の霊を敬い、丁寧にお迎えするための大切な供養の一環です。仏花としてふさわしい定番の花を選ぶだけでなく、夏の暑さに耐えられる花材を選ぶ配慮や故人の好みに寄り添った花を選ぶ心遣いも供養の形として尊ばれます。

また、色合いや配置といった見た目の整え方に加え、トゲや強すぎる香りといったマナー面への配慮も大切です。

近年は住宅事情の変化により、盆棚の形式も多様化していますが、「心を込めて飾る」という本質は変わりません。伝統に敬意を払いつつ、自身の暮らしに合った方法で丁寧に準備することで、お盆の時間がより豊かで意味のあるものになるでしょう。